お墓の向きと墓相について
墓相について
そうじゃない墓相(考え方)もあることを知っていただけると嬉しいです。
お墓の向きとは
「お墓は東向きがいいんでしょ?」と、お墓の向きを気にされる方がいらっしゃいます。
お墓の向きとは「お墓の正面がどちらを向いているか」を指し、「東向きのお墓」とは「お墓の正面は東を向いている」ということです。
縁起がいいとされるお墓の向きは「東向き」だけど・・・
一般的に、縁起が良いとされるお墓の向きは東向きです。
「お墓の向き」で検索すると、東以外の方角だと「自殺」「変死」「ケガ」「精神病」「夫婦別居」「火難」などの災難が起きる、と記載しているサイトもあるのですが、ご安心ください。これには何の根拠もありません。
ちょっと古い墓地を見ていただければおわかりいただけると思うのですが、東西南北、お墓はあらゆる方向を向いて建っています。
また、私のお客様の中にも「北向きに建てたけどお墓を建てたら孫ができた」という方もいらっしゃれば、「東向きに建てたのにケガをした」という方もいらっしゃいます。
なぜどちらの向きに建てたかで幸不幸が決まるのでしょうか?
その根拠や原理原則を示した人は誰もいません。
そもそも、お墓を建てるのはご先祖様や親しい故人のご冥福を祈るためだったはずです。
思い出してください。
お墓を建てる最初の思いは「故人のために何かしてあげたい」というあなたの愛情や優しい気づかいによるものだったはずです。
決して幸運を願うためではなかったのではないでしょうか?
お墓と運勢を言いだした人たち
「こんなお墓を建てたら運勢がよくなる」
「あなたが不幸なのは○○なお墓を建てたせいだ」
と言いだしたのは、墓相(ぼそう)と言われる知識を悪用した人たちです。
「墓相」について簡単に説明しますと、「お墓の形や石の種類、建てる場所などを細かく分類して、その影響を調べたもの」です。
「墓相」と言われてピンとこない人でも家相はご存じだと思います。
「家の西側に金色のものを置くと金運があがる」とか「黄色の財布を持つと金持ちになる」とか言っているあの家相です。
「家相は家、墓相はお墓」と考えてもらえば間違いありません。
もともとの墓相とは
墓相とは、もともと風水(ふうすい)という「古代中国の地形活用の智恵」から生まれました。
風水は古代中国で「どこに軍隊を配置すれば勝てるのか」という軍略から発生したと考えられています(諸説あり)。
例えば「山や川、沼などを考慮して、守りを固める」「敵を狭い路地に誘い込み、挟み撃ちにする」などの戦闘技術だと考えるとイメージしやすいかもしれません。
また戦争から離れ「生活する空間」に根差したものも生まれます。
住宅に関する風水を「陽宅(ようたく)」、お墓に関する風水を「陰宅(いんたく)」と言います。
今、一般的に日本で言われている「風水」は主に「陽宅」を指します。
家相は昔の建築学
私は家相は「昔の建築学」と考えています。
今の様な建築学ではなく、昔の人が家を建ててきた経験や謂われ、迷信などをまとめたものだと思われます。
何の指針もなく家を建てるより、家相のような指針があると便利ですよね。
しかし、今もこの昔の建築学がそのまま通用するとは思えません。
地形も、材質も、家族構成も、建築方法も昔とはずいぶん変わっています。
昔は正しいと信じられていたことも、今では否定されていることは多いでしょう。
墓相も家相と同じように考えられます。
墓相は「昔の建墓学」なのです。
「どんなお墓を建てたらいいのか」「どんなところを墓地に選ぶといいのか」などの悩みを解決する智恵をまとめたものです。
今も昔も故人の安らぎを願う気持ちは変わらないと思います。
ただ当時とは時代が違い、状況が異なり、技術も進歩しています。
昔の考えをそのまま当てはめるのは、非常に滑稽なことだと思いませんか?
ではお墓の向きは関係ないのか?
私はお墓職人の三代目です。
数千基のお墓を見て、数百のお墓を建ててきました。
そして数千人のお墓を大切にしている人たちとお話してきました。
そんな私は「お墓の向きは気にする必要はない」と確信しています。
少なくとも、お墓と吉凶を結びつけることはご先祖様に失礼だと思っています。
あなたは自分が幸せになるために、故人を弔うのですか?
あなたは自分が幸せになるために、命に感謝するのですか?
お墓職人がオススメするお墓の向き
ただし、お墓職人として「北向き」はオススメしていません。
それは経験上、お墓の北側は汚れやすいとわかっているからです。
これにはは日照時間が関係していると思われます。
日当たりが悪い北川は汚れが付きやすいのです。
わざわざ「お墓の正面」を「汚れやすい方向」に向ける必要はありませんよね?
ですから北向きはオススメしていないません。
ただ墓地の形や通路などの事情で北向きのお墓を建てないといけない方もいらっしゃいます。
そんな方には「こまめにお掃除してあげてくださいね」とアドバイスをお伝えしています。
キチンとした理屈で説明できれば、なんの怖いこともないのです。
人を脅してお墓を建てさせるなんて非道でしかありません。
だからといって墓相を完全に否定していません
先に言ったとおり、「墓相」は古臭く、迷信と言われるものが多く含まれます。
しかし「墓相」は昔の人の知恵の集合でもあります。
ですから私は墓相のすべてを否定しているわけではありません。
昔の人は現在のような科学的な説明はできなかったかもしれませんが、昔の人なりの言葉で、大事なことを伝えていることもあります。
例えば「夜に爪を切ると親の死に目に会えない」という風習があります。
いろんな説がありますが、私は父から「照明が今ほど明るくなかった昔、爪を切ると間違って指先を切ってしまうことがある。そんな手足で外仕事をすると切り口から菌が入り、破傷風にかかってしまう。抗生物質がなかった昔、破傷風は死亡率が非常に高く、親よりも先に死んでしまうことがあった」ことから言われている「戒め」だと聞きました。
私たちお墓職人はそのような「昔の人が本当に伝えたかった大事なこと」を見つけ、皆さんにお伝えすることも仕事の一つだと思っています。