お墓を建てるのに資格が必要ありません。だからこそ大切にしていること。
資格は技量を示す1つの目安ですが、絶対に必要なものではありません。
だからこそ私はその資格を大切にしたいと思っています。
資格とは
資格は、ある行為を行うために必要若しくは相応しいとされる地位や立場をいう
(引用:フリー百科事典 ウィキペディア)
車を運転するには免許の資格が必要になります。
飲食店として調理をするには、調理師免許の資格が必要になります。
住宅を設計・工事管理するには、2級建築士の資格が必要になります。
しかしお墓を設計したり、建てるのに資格は必要ありません。
*注:もちろん重機を動かす免許や、物を吊ったりするのに必要な玉掛け資格などは必要です。
お墓に関連する資格
石材、お墓に関連する資格は以下のようなモノがあります。
国家資格
それぞれの作業に関する知識や作業レベルを、法律に基づいて判定し認定します。
- 厚生労働大臣認定 石材施工(石材加工作業) 1級・2級
- 厚生労働大臣認定 石材施工(石張り作業) 1級・2級
- 厚生労働大臣認定 石材施工(石積み作業) 1級・2級
- 厚生労働大臣認定 職業訓練指導員(石材科)
一般社団法人認定資格
お墓やそれに関する仏事神事全般の知識の保持を、一般社団法人が判定し認定します。
- 日本石材産業協会認定 お墓ディレクター 1級・2級
職業訓練指導員免許
専門的な知識と経験を保持し、なおかつ指導に必要な知識の保持を、都道府県が判定し認定します。
ものづくりマイスター
ものづくりに関した優れた技能、経験を有する方を中央技能振興センターが運営する審査委員会が認定・登録します。
この他、最近では
「生前整理アドバイザー」などの資格を取る石材店も増えてきています。
資格は技術を測る一つの目安
資格の有無は技術を測る一つの目安となります。
しかし、「資格を持っている」=「腕がいい」「良いお墓を建てることができる」とは限りません。
現に私は国家資格1級を2つ(石材加工作業・石張り作業)、民間資格のお墓ディレクター1級を持っていますが、お墓に関してもまだまだ学ぶべきことが多くあります。
保有している資格の数では父や祖父を超えていますが、お墓職人として超えたかと言うとまだ疑問です。
ただ資格は石材店の技量を示す一つの目安になります。
それは1級の資格を取得する為には「一定レベルの経験と知識」が確実に必要となるからです。
資格の有無は直接ご確認ください
ときどき名刺などに資格が書いてあっても、実際に資格を保有しているとは限らないケースや、級数を誤魔化しているのを見聞きします。
例えば「お墓ディレクターの資格を持っている」と言っても、1級か2級か明示していない者もいます。
第2回お墓ディレクター検定試験(2016年1月27日開催)では
1級合格者 43名(136名中)合格率31.6%
2級合格者 267名(313名中)合格率85.3%
(日本石材産業協会発表)
以前よりも2級は合格率が下がり、1級合格率が高くなっている気がします。
お墓ディレクターを名乗る場合、その級数も伝える必要があります。
また、認定証を持ち歩き、必要な場合は提示しなくてはいけません。
実は石材1級技能士にも認定証はあります。
資格を取ってみて得たもの
資格はある一定の技術レベルを保証するものではありますが、なくてもお墓を建てることができます。
それでも資格を取ってみた得たものがあります。
古いお墓の価値に気付く
特に難易度の高い石材加工1級技能士の試験は、今はあまり使われていない昔ながらの手加工の方法を実技試験で試されます。
試験対策で手加工技術の修練を積んでいくと、古いお墓がどれだけ苦労して作成されたかわかってくるようになりました。またどのような作成方法、組み立て方をしているのかもわかってきます。
古いお墓の裏にあるその苦労や価値を知ることで、お墓のリフォームなどに関して技術と心構えが飛躍的に上がりました。
なにより、そのお墓を作った人たちの苦労や流した汗の量を実感することができました。
普段なじみの少ない知識が深くなる
お墓ディレクター1級を取るにあたり、お墓だけでなく、仏教、神道、墓地情勢、墓地埋葬等に関する法理などを網羅する944ページのテキストを把握せねばなりません。
その過程で日常業務ではなかなか知ることができない専門知識を学ぶことができます。
また、私のように父や祖父から伝え聞いていた話の確証を得ることができることもあります。
逆にテキストに掲載されている情報の裏を、父や祖父の話で取れることもあります。
このサイトはそれらの情報もかみ砕いてお伝えしています。
私にとっては親子の絆
実は戦後、富山県で初めて石材施工の国家資格が行われたとき、私の祖父が試験監督をしています。
そして父は富山県石材技能士協会の技術指導員を長く勤めていました。
私自身も、技術指導員としての活動をしています。
私にとって資格は単なる技術を表す目安ではありません。
祖父から父、父から私へと受け継がれてきた、親子の絆なのです。
石材の石材加工の実技試験では電動工具を使いません。
昔ながらの道具を使い、手加工で作業をします。
カーンカーンカーンと石を叩いていると、今は亡き祖父や父の姿を思い出します。
「お墓職人でよかったな」と思う瞬間でもあります。
- お墓を建てるのに資格は必要ない。
- ただ資格は一定レベル以上の知識や技術を身につけていることを示す。
- 資格を得る過程で、広い知識と伝統的な技術を得る。またお墓を建てた方の心情や苦労を肌に感じることができる。