お墓の地震対策とは 耐震・免震施工について お墓と地震の関係

この記事の概要

  • 昔の施工のままでは震度5でほとんどが倒壊する。
  • 地震が多くなっている今、耐震・免震施工は標準であるべき。
  • 一般的には耐震より免震が安心。
  • 基礎から免震対策をとることもできる。

 

お墓は震度5でほとんど倒壊する。

お墓を建てるとき、修理するとき、「地震があったらお墓はどうなるんだろう?」と考えるたことはありませんか?

地震の少ない富山県だとあまり考えないかもしれませんが、一度でも被災していると真っ先に考えることだそうです。

大きな地震があると、家屋の倒壊とともに必ずお墓の被害状況も伝えられます。

なぜなら、ちょっと大きな地震があると、必ずお墓にも被害があるからです。

そのせいか少し前までは地震があると、倒れているお墓の数を見て被害状況の目安としていたそうです。

「いくつかの墓石が倒れる」と”震度4”、「ほとんどの墓石が倒れる」と”震度5”という感じです。

近年震度5以上の地震が多発しています。

気象庁が発表しているデータを調べてみますと、
阪神・淡路大震災(1995年1月17日)から2017年10月26日まで22年間の間に321回も起きています。
(気象庁 震度データベース検索 http://www.data.jma.go.jp/svd/eqdb/data/shindo/index.php

そこで阪神・淡路大震災前の22年間では48回。

1995年1月17日を境に、地震の回数は14.6倍になっています。

大切な人が眠るお墓が、そんな頻度で倒れては困ります。

 

実際、阪神・淡路大震災後にさまざまな地震対策が生み出されました。

 

様々な地震対策について(耐震・制震・免震)

地震に対する施工は大きく分けて3つあります。

耐震:揺れに耐える
制震:揺れを吸収し制御する
免震:揺れを伝えず免れる

お墓に関しては、石と石のすき間に地震対策を施工するのが一般的です。

 

Youtubeさんからお借りしたものです。
とってもわかりやすい耐震制震免震の説明です。

 

墓石の代表的な耐震施工は、石を対する石にはめ込む大入れという構造や、石またはステンレスの芯棒をいれることでガッチリと固める施工です。

免震に関しては石と石のスキマを固めるのではなく、ある程度の可動域を設けることで地面の揺れを軽減させる施工法です。

制振に関しては墓石には該当するものはまだありません。(2017年現在)

現在の主流は免震施工となっております。

 

お墓の地震対策(免震)

以下、インターネットで調べられる免震施工、もしくは研究誌『お墓と地震と地盤』に掲載されていた施工法をご紹介いたします。
(Google検索「お墓 免震」の結果順のご紹介です。)

 

安震はかもり(株式会社 安震)

https://youtu.be/EuGp-XK7nFo墓石用免震ゲル「安震はかもり®」は、地震の揺れを吸収して逃がし「免震(吸震)」の役割を果たす特殊ゲルパット。
5cm四方、厚さ5mmの特殊ゲルの中央に、直径6mmの鉛の球と耐荷重リングが埋め込まれています。鉛の球は墓石の重さでゲルが潰れるのを防ぎ、墓石の平衡を保ちます。
(参照元:http://www.anshinsystem.com/tokuchou/seinou )・石の産地として有名な愛知県岡崎市の8代目社長が開発した免震機構です。
・加盟店による施工が必要です。
・全国で広く採用されています。
・材質が不明

 

墓石用免震パッド 礎 (空間飾彩 GAUDI’S)

https://youtu.be/ZSlPQtOdxv8耐震、免震パットは多種ありますが、そのほとんどが墓石用接着剤を使用しなければ効果が得られないものが多く、そういった製品の中には、いかにもパットだけで効果が得られるように記載をしている物がありますが、実際はほとんどが接着剤を使用しています。
界面の接着効果を最大限発揮できるのは礎だけです。
(参照元:https://www.kukansyokusai-gaudis.com/%E5%A2%93%E7%9F%B3%E7%94%A8%E5%85%8D%E9%9C%87%E3%83%91%E3%83%83%E3%83%89-%E7%A4%8E/)・長野県佐久市の石屋さんが開発。
・一部地域を除き加盟店制度を廃止。
・万が一の取り外しにも対応。
・「地震に対する効果はパットだけでは得られないこと」を明記していて良心的。
・接着剤性能を最大限に発揮させることを主眼としている。

 

墓石用地震ゲル 泰震 (有限会社 ボイス)

https://youtu.be/ruQVF7vcozwシリコンゲルの採用で長期間の耐久年数を実現
「シリコンゲル」は、「耐熱」「耐寒」に優れ、-60℃~150℃の温度範囲において特性の変化が少なく、夏は炎天下、冬は風雪にさらされる墓石には「シリコンゲル」が最適と考えました。
(参照元:http://www.taishin-boseki.jp/product.html)・加盟店による施工が必要です。
・全国で広く採用されています。
・シリコンゲルと素材をしっかり明示しています。そして対候性・耐久性に優れています。

 

免震棒 (全優石)

(動画、見当たらず)特許取得番号:3542503号 平成16年4月特許取得
平成7年1月17日に起きた阪神淡路大震災の後、全優石が全国ネットの組織性を生かし、いち早く被災状況把握に着手し、その原因の解明と対策のため全優石耐震墓石委員会を設置し、全優石独自の免震墓石の開発に取り組み開発されました。
全優石オリジナルのステンレス金具に、衝撃吸収率90%の特殊衝撃吸収(ジェル)材を使用した「全優石免震棒」です。(https://www.zenyuseki-miyagi.com/%E5%85%8D%E9%9C%87%E5%B7%A5%E6%B3%95/)*注:詳しかった全優石宮城支部のサイトを紹介しています。

・昔からある全優石が推奨している。
・全国の加盟店で採用されている。
・加盟店による施工が必要です。

全優石加盟店の検索はこちらから。(http://www.zenyuseki.or.jp/sekizai/search.html

 

 

不倒 (アイディールブレーン株式会社)

https://youtu.be/2-W8HXE7eXk不倒はお墓の転倒防止用の両面粘着シート。
超高層ビル用に特別配合した粘弾性体を使用し、耐久性は100年以上です。
大切なご先祖様を、地震から守ります。(http://ibrain.jp/futo_main.html)・特殊粘弾性体使用で、耐久性は100年以上です。
・安心の20年長期保証です。(加盟店施工の場合)
・紫外線劣化・酸化劣化・熱劣化が無視できます。

*研究誌『お墓と地震と地盤』に実験結果アリ。震度7相当の揺れにも耐えている。

 

ソフトファスナー (株式会社 流石)

(インターネットで動画は見当たらなかったが、研究誌『お墓と地震と地盤』に実験結果アリ。震度7相当の揺れにも耐えている。)・建築や船のコンテナなどにも使われている素材で、長期使用、防水性能が実証されている。
・開発者は全国で出張講演されている。(http://sasuga-g3.com/

 

墓石用エアーダンパー (各種工具店にて取扱いあり)

(インターネットで動画は見当たらなかったが、研究誌『お墓と地震と地盤』に実験結果アリ。ボンドなどを併用させずに震度6強相当の揺れでも転倒せず。)工具屋ボイス(http://www.bosekiten.net/shop/item2-010125001.html
*一番わかりやすかったのでリンクを貼らせていただきました。・取り外し・回転が可能
・エアーダンパー効果により地震を吸収
・取付け方はステンレス心棒と同じ
・ステンレスワイヤーで振動並派を吸収
・これで施工したいときは、石材店に直接交渉するといいです。

 

墓石用弾力性接着剤

硬化するものから弾力性に優れたものまでさまざまなものがあります。研究誌『お墓と地震と地盤』に実験結果あり、正しく施工すれば震度7でも石に変化はなかった。

・どの石材店でも入手可能。そして使用しています。
・正しい知識、施工法を知らずに使っている人も多い。
・お墓の重量と接着面積、耐えるべき荷重の設定により施工方法が異なります。
・免震パッドも芯棒金具も、ほとんどの地震対策に接着剤が併用されています。(素材はそれぞれ異なる場合があります。)

 

お墓ではなく、基礎地震に免震機能を持たせる方法

今までは石と石の接合部分を工夫することで免震機能を持たせる施工を紹介してきました。

しかし、それでは基礎は地震の影響を受けてしまいます。

そこでお墓を支える基礎自体に免震機能を持たせ、お墓を地震から守る方法も在ります。

軟弱地盤をも活用できるD-Box工法 (D-box協会)

お墓を支える基礎の下にD-Boxと言われる構造物を設置することで、様々な効果を発揮します。
・液状化現象軽減効果(地震のときに砂が液状化し地盤が軟弱になるのを軽減します。)
・圧密沈下軽減効果(お墓の重みで粘土質の地盤の中の水分がゆっくり排出され、沈むことを軽減します。)
・振動軽減効果(交通振動や地震動などによる振動を軽減します。)また以下の様な特徴があります。
・地盤改良材などを使わないため、樹木や生物に悪影響を与えません。
・袋は土中分解されないため、耐久年数は半永久的。
・大手ゼネコンや公共事業にも使われている工法です。
・もともとは軟弱地盤を活用するために開発されている工法を、お墓の基礎に応用している。D-Box工法の概要

NHKで紹介されました

D-Box協会(http://www.di-box.jp/index.html

 

 

正しい施工が行われていることが不可欠

どんなに優れた免震施工を採用していたとしても、正しい方法で施工されていなければなりません。

例えば、どの免震施工にも適切な使用量が決まっています。そして施工に最適な環境も決まっています。

それらの条件が満たされていなければ、免震能力が十分に発揮されないのです。

正しい施工をする石材店か見極めるポイント

  1. 事前に「正しい施工基準」の説明がある。
  2. 施工後に「正しく施工したか」証明してくれる。(施工写真がベスト)

上記2点を確かめるためにも、数店で確認をとるか、インターネットで知識を仕入れることは有効です。

以下、石材店が具体的にどのような説明をするか、例を挙げておきます。

1.事前に「正しい施工基準」の説明がある。

施工には必ずポイントがあります。例えばお墓の免震施工については

  • 具体的にどんな資材を使用するのか。
  • 施工時の環境(天候・気温・養生期間など)
  • どれだけの衝撃、揺れを想定しているか。
  • 上からどれだけ荷重がかかることを想定しているのか。その場合に必要な資材の量の目安。

こんな感じですね。

石の立山では
  • 具体的にどんな資材を使用するか。
    • 弾力性接着剤(免震用)
    • 強粘性バージンブチルゴム(免震用)
    • ステンレス製連結金具(補強連結用)
  • 施工時の環境
    • 基本的に晴天時に施工を行います。
    • 5℃以下の環境下では施工しません。
    • 状況によって養生期間は異なりますが、24時間から36時間を想定しています。
  • どれだけの衝撃を、揺れを想定しているか。
    • 東日本大震災(震度7:1076gal)を想定しています。
  • 墓石の重量で資材の量を決めています。施工スケールを用意し、それを元に施工を行います。

 

2.施工後に「正しく施工したか」証明してくれる。(施工記録がベスト)

施工前に受けた説明通りに施工されているのか、確認が必要となります。
一番いいのは施工記録を見せてもらうことです。

施工記録とは施工過程を写真で撮影して、文字などの説明などを記載した資料です。
どの様な施工が行われたか後から確認することができます。

また、過去によく似た施工があれば、事前に施工記録を確認することでどのような施工が行われるか把握することができます。

石の立山の施工記録についてはこちらを参考にしてください。

 

 

まとめ

お墓の免震1つとってもいろいろあることがわかってもらえたでしょうか?

免震施工をオプションにしている石材店もあれば、基本施工として免震施工を取り入れている石材店もあります。

個人的にはこれだけ地震が頻発しているので、地震対策は必須だと思います。なぜオプションにするのか意味が分かりません。

ステンレス芯棒一つとっても、何を目的として使うのか知った上で施工をしないと役に立ちません。ステンレス芯棒=耐震施工、というわけではありません。

施工に対する知識が石材店によって全く異なります。

個人的には、墓石用弾力性接着剤をしっかり使えば、代理店販売されているようなものを使用しなくても、十分な免震機能が発揮されると思います。(また、実験でも証明されています。)

 

どんなにいい施工法も、正しく行われていなければ意味がありません。

 

耐震施工、免震施工について詳しく説明できるか、十分な説得力があるか。そこに石材店の力量が現れます。