7月の最終日、一本の電話が入りました。

「お墓の文字を黒色にしてもらいたいのですが」

それはお墓に刻まれている文字の色を、赤色から黒色に塗りなおして欲しいというご依頼でした。

 

 

富山県ではすべての地域ではありませんが、かなり広く浸透している習慣として「お墓に刻んだ文字に色を塗り」ます。
一般的に「ご存命の方のお名前には赤色を、故人のお名前には黒色を」塗るのです。このとき苗字はどちらも黒色で塗り、名の部分だけ色分けするのが一般的です。

 

 

なぜ「生きていれば赤色、亡くなれば黒色」なのか…インターネットでもいくつか理由が書いてありますが、私は父から「その方の徳を称えて朱を入れること許す」と教わりました。
父もその昔祖父から教わり、祖父もまた先達から聞いたようです。

 

父の解説によると「徳を称えるための赤色だから、生死は関係ない」とのことでした。

生死ではなく
「この人は人のために尽力した方なんだよ」
そんな人を称えるために、名前を赤色に塗ったそうです。

 

しかし時代が下り、いつしか「生きている人は血が流れているから名前を赤色を塗る」という話が出てきました。
それがわかりやすく覚えやすいせいか、現在では一般的にこちらで知られているようです。

 

仮にもともと文字の色と生死が関係なかったとしても、今は習慣として「ご存命=赤、故人=黒」が広く浸透しているのであれば、私はそれを踏まえるようにしています。

 

 

それに、今となってはどれが本当の理由なのかわからないのが正直なところです。
インターネットでは「戒名をいただいたとき、存命であれば赤色を使っていた名残」ともありましたが、それすら本当かどうかわかりません。

 

恐らく上記やその他の様々な習慣が重なって今の形に根付いたのではないでしょうか。

 

 

私が電話先のお客様に、お名前とご住所をお聞きすると「実は以前、そちらでお墓を建ててもらった者です」と告げられ、墓地と当時の施主様のお名前を教えていただきました。
それでお墓を建てた当時のことを思い出すことができました。

 

その施主様は小柄なご婦人でした。
「旦那様の初盆に間に合わせお墓を建てたい」とご相談にいらっしゃったのです。

初めてお客様のお宅にお伺いしたとき、最初に冷たい麦茶を、そして二杯目に冷たい緑茶を出してくださいました。
美味しいお茶ですね、と私が言うと「これ、水出しなのよ。少し時間がかかるけど簡単だし、とっても美味しいので毎日作っているの」と嬉しそうに作り方を教えてくださりました。本当にお茶のことが好きな方だとわかりました。

秘訣は「ゆっくり沸かした湯冷ましを使うこと」でした。
不思議なことにゆっくり沸かすと白湯の味も違うそうです。
これは私も試して実感しました。
弱火でコトコト沸かした白湯はほんのり甘い味がするのです。

いただいたお茶も、とても甘く深みのある味だったのを覚えています。

 

 

十数年前にそのお墓を建てたのと同じ時期に、お墓の文字を塗りなおし、一緒にお墓自体もクリーニングすることになりました。

 

お墓に文字を塗る作業はこんな感じで行います。

1)彫刻部分の汚れを高圧洗浄機などで完全にとりのぞく。
2)最初に塗られている赤色を溶剤で溶かす。
3)完全に乾燥させてから黒色を薄く塗る。
4)乾かしてから再度黒色を塗る。

*一度に厚く塗らないのが長持ちする秘訣です。

 

 

先日、その方よりお電話をいただきました。

「キレイにしていただいてありがとうございます。
お墓のことは全然わからなくて本当に助かりました。
実は葬式が終わって、お墓を見に行った叔父にお墓のことを教えてもらってから、お墓の汚れがずっと気になっていたんです。
昨日無事納骨いたしました。
これで母も安心してくれていると思います」

 

お盆に入っても相変わらず日中は暑い日が続いています。

久しぶりに冷たくて甘い緑茶が飲みたくなりました。

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