お墓参りは「万が一のとき」について話せるチャンスです。

お墓参りのときには、家族といろんなことを話しましょう。
特に親から子に「普段付き合いのない親族」の話や、「万が一のとき」について話すのはお墓参りの時がピッタリです。
「そんな話は縁起が悪い」なんて思わないでください。
それは子供のためなのです。
先立つ人が、遺された人に残せる、数少ない思い出なのです。

お墓参りは一大イベントでした

子供のころの私にとって、お盆のお墓参りは年に一度の大きなイベントでした。

石屋が家業のわが家ではお盆までは忙しく、それ故お盆休みが長くなります。
ですから家族で遊びに行くとしたらお盆のお墓参りの後。
だから子供のころはお墓参りが待ち遠しかったのを覚えています。

お参りは県内の3か所の墓地に行っていました。
お参りするお墓は10基ほどあります。

その途中でいろんな話を聞けました。
出会ったことのない母方の祖父母のことや、両親の子供のころの思い出話。
お墓参りの作法から、簡単なお墓の掃除の仕方。
そして父が親戚のお墓をチェックしている姿を見て、故障個所の判別法と対処法も身に付けました。
門前の小僧。。。ですね。

お墓に行くと普段はあまりしない会話も自然と交わせる

一番印象に残っているのは、父が自分に『万が一があった時』についての話をしたことです。
「もし父さんに何かあったらね。。。。こうして欲しいな」そんな話をしていました。
日常生活ではそんな話はしなかったでしょう。
私たちも「縁起でもない」と言っていたかもしれません。
でもご先祖様と近しい身内のお墓にお参りした後だと
不思議と『死』についても話ができました。
『死』は人に必ず訪れる永遠の別れ。
でも思い出は心に残り、体はお墓に残る。
お墓参りをすることでそれを確認できるからではないでしょうか。

私も父と同じ石工職人の道を歩み初めてから20年以上経ちました。
日々の仕事ではいろいろなお客様に出会います。
大切な連れ添いを急に亡くした方。
旦那さんを亡くして50年間おひとりでお子様を育て上げた方。
お子さんを急な事故で亡くしてしまった方。
短期間で相次いで身内を失くしてしまった方。
どの方も大切な人の死を悲しみ、
そしてその人なりに『死』と向き合っていらっしゃいました。

ありがたいことににみなさん
「お墓を建ててよかった。一区切りついた」とおっしゃって下さいます。
「ここに来ればお父さんに会えるからね」
「おじいちゃんがずっとお墓をキレイにしたいと言っていたもんね」
すぐに悲しみは癒えるはずはありませんが、
それでもお墓参りをしたことで心に区切りをつけ、
前に進む決意をしていらっしゃるようでした。

お墓の魅力とはこんな風に『死』を超えて家族の絆を紡いでいけることではないでしょうか。
大切な人は形を変えて側に居てくれます。
そして私たちもそうなることができるのです。

「父さんもじいちゃんもな、お墓を建てるだけじゃないんだぞ。
大切な人と再び出逢える場所を作っているんだ」
父は私にそう言っていました。

今年は珍しく雪が少ないので、富山でも冬にお参りに行けそうです。
天気のいい日に、また家族みんなで父に逢いに行きます。