「土用にお墓を建ててはいけない」と言われている理由と対策

 

『ドヨウのウナギ』は皆さんご存知かと思います。

その他にも、『ドヨウにはお墓を建ててはいけない』という話を聞いたことありませんか?

『ドヨウ』と言っても『土曜』ではなく、『土用』ですからね。

ちなみに、今年2020年の夏の土用は7月19日(日曜日)~8月6日(木曜日)。7日は立秋。

土用丑の日は7月21日(火曜日)、二の丑は8/月2日(日曜日)です。

土用ってなに?

『土用』とは古代中国の思想、五行思想に関連する言葉。

古代中国では五行思想(ごぎょうしそう)という考え方があります。

五行思想をザックリ説明すると、
【「万物は五つの要素で構成されている」ととらえ、その組み合わせで世界を理解する考え方】と思ってください。

具体的には世界を
・木(もく)
・火(か)
・土(ど)
・金(ごん)
・水(すい)
の5つの性質に分けてます。

あくまでも『物質』ではなく、『性質』や『働き』です。

五行それぞれの性質

それぞれの性質を説明すると

・木(木行):伸び伸びと上に向かって成長する。
・火(火行):物を燃やし、温める。上に向かう。
・土(土行):収穫や豊かな栄養。土壌。
・金(金行):集まり収束していく働き。
・水(水行):物を冷やし、潤す。下へ向かう。

五行思想では「万物はこの五行のどれかの性質、傾向を持つ」と考えます。

人体にも、天気にも、方角にも、四季にもです。

何がどの性質に当てはまるのかはそのものの働きや在り方を見極め、
五行に当てはめていくようです。

南は木、胃は土、甘いものは金、
などは昔の人の観察、経験から判断して
五行が決められています。

ちなみに『五行』の『行』には『めぐる』『秩序』という意味があります。

五行はそれぞれ密接に関係があり、お互いに相手を強めたり弱めたりします。(ジャンケンみたいな関係です)

四季の移り変わりにも五行が当てはまる

四季の移り変わりにも五行が当てはまります。

春は万物が伸び伸びと上に向かって成長し始めます。
→春は木気が盛んになると考える。

夏は気温が上昇して暑くなります。
→夏は火気が盛んになると考える。

秋は今までの成果が収穫物として収束していきます。
→秋は金気が盛んになると考える。

冬は気温が下がって寒くなります。
→冬は水気が盛んになると考える。

季節の変わり目
→土気が盛んになると考える。

一年(365日)を五分割すると73日。
さらに土気の73日を四分割(18日、小数点切り捨て)にして、それぞれの季節の後半に設けます。

これがその季節の土用と言います。

以上を図にまとめてみました。

土用というのは「季節の変わり目(立春・立夏・立秋・立冬)の直前の18日間」を指します。

 

「土用にお墓を建ててはいけない」とはどういう意味なのか

「土用の間は、土の気が盛んになるので、穴を掘ってはいけない。」という言い伝えがあります。

この言い伝えは正確には「土用に鍬入れするべからず」と聞いています。

お墓を建てるときも、基礎を作るために土を掘るので
『土用にはお墓を建ててはいけない』と考えるお客様もいらっしゃいます。

ただ「鍬入れするべからず」と言っているので
「土用に入る前に着工すればいい(ひと鍬入れればいい)」と考えて、儀式を行い着工する方法もあります。

また土用の期間にも「土用の間日(まび)」という日が設定されていて
「間日は土用の障りがない」とされている。

ですからどうしても土用を気になさるお客様に対しては、
土用の前に施工を少し入らせていただく、という処置を取っています。

私個人の土用に対する考え方

私は個人的に土用とは
『季節の変わり目であるので、あまり身体を酷使しないようにする期間』ととらえています。

季節の変わり目は天候が変動し、気温気圧が目まぐるしく変わるせいか、体調を崩しやすいものです。

加えて、昔の土木作業は重機などの機械がなく、今よりも重労働でした。

ですから昔の知恵ある人は『体調を崩しやすい土用の期間は、土を掘るなどの作業をしない方がよい』と考えたのではないか、と私は思っています。

 

そう考えると「土用のウナギ」は理にかなっているのかもしれません。

身体の体調を整えるために、精の付く食べ物を食べようということですから。(正確には「う」の付く食べ物ですが)

また、土用の間は殺生も避けるべきとされています。
これも「心に負担をかけるようなこと(殺生)は避けるべきである」と考えたのではないでしょうか。

物事の本質をとらえようとすること

昔からの言い伝えには『根拠のない迷信』もあれば、
『誤解を受けやすい表現ではあるが、なるほど理にかなっている』ということもあります。

いたずらに迷信に振り回される必要もないと思いますが、
だからと言って無碍(むげ)に切り捨てるのべきでもないと思います。

少し立ち止まって、物事の本質をとらえようとする姿勢や視点も必要なのではないでしょうか。

私がお墓を建てる時は、昔からの言い伝えをそのまま鵜呑みにすることも、またただ信じることもしないように心がけています。

なぜなら先人の言うことには、どう考えても今の時代にそぐわないものもあれば、バカにできない大切な智恵が含まれていることもあるからです。