「お墓の名前を消す事はできますか?」
年に数回、このようなご質問から始まるお電話をいただくことがあります。
よくよく聞くと「実は、今のお墓には先妻さんの名前が書いてあって、私の名前は書くことはできるのでしょうか?」という相談でした。
お墓に先妻さんの名前が書いてあります。この場合、私の名前はが書けないのでしょうか?
1)お墓の空きスペースに後妻さんのお名前を新しく書く。
2)先妻さんのお名前を消してから後妻さんのお名前を書く。
順番にご説明させていただきます。
もちろん「名前」だけではなく「家紋」や「絵柄」についても同じです。
また、お墓は富山県のお墓を例に使っています。
他府県のお墓の場合、大きさや形状が異なるため少し事情が異なります。
解決策1)お墓の空きスペースに後妻さんのお名前を新しく書く
1つ目の解決策は、「先妻さんのお名前はそのままにし、空いている場所に後妻さんのお名前を書く」方法です。
この場合、お墓の状態によってお名前を書ける場所が多少異なります。ご注意ください。
和型墓石の場合
通常、図のような和型墓石では「人の名前」は星マークの箇所か、扉の裏に書くことができます。
洋型墓石の場合
図の星マークの箇所、もしくは扉の裏側に人名を書くことができます。
もちろん上記以外の場所に人名を書くこともできますが、あまり一般的ではありません。
特にお墓の一番上の石に文字を書く場合、閉眼供養(心抜きの儀式)を行ったあと、石を取り外して加工する必要があります。
解決策1の説明は以上です。
続いて、解決策2の説明に移ります。
解決策2)先妻さんのお名前を消してから後妻さんのお名前を書く
彫刻部分をパテなどで埋めて、石目に似せた着色する方法
彫刻部分にパテや接着剤などを埋めて、研磨しなおします。ただ、どうしても材質が違うので光沢や色、石目などの違いから図のように名前が見えることがほとんどです。
この部分に新たに文字を彫刻することはできません。
文字部分を切り取り、同じ石を埋め込む(象嵌:ぞうがん)
修正したい箇所を切り取り、そのあとに修正したものをはめ込む技法を【象嵌:ぞうがん】と言います。
石で象嵌を行う場合、修正箇所をえぐり取り、その部分と同じ形状に作成した石をはめ込みます。
通常は石種の違うものをはめ込むのですが、この場合は同じ石種を使用します。
非常に高度な技術と時間を要する作業となります。
同じ石種で象嵌を行った場合でも、境目がわかることがあります。
この方法で修理をした場合は、新たに文字を彫刻することができます。
施工前に閉眼供養(心抜きの儀式)を行い、取り外す必要があります。
解決策2-2)隠す
文字の上から別の石を貼り付けて隠す方法です。
お墓の一番上の石に板石を貼り付けます。
板石はお墓の形状に合わせて設計します。
正面から見るとこのようになります。石の厚みは大体20㎜~25㎜程度です。
もちろんこの上に文字を書くことができます。
施工時に閉眼供養(心抜きの儀式)を行ったり、石を取り外す必要はありません。
解決策3-3)削る(切り取る)
文字を書いてある面を削る、もしくは切り取ることで文字を消します。
赤線部分で削り(切り取り)ます。
右側面を削ると、左側面も削ることになります。
削る厚みは15㎜~20㎜程度です(彫刻部分の深さにより異なります)。
削り取った場所には新たに文字を書くことができます。
施工前に閉眼供養(心抜きの儀式)を行い、取り外す必要があります。
解決策2-4)交換する
文字が書いてある石を取り外し、別の石に交換します。
図では「A」と書いてある石を取り外し、「B」と書いてあるいしと交換しました。
石の種類によっては同じ石種が用意できなかったり(その石が採掘できなくなったなど)、同じ石種でも年代によって石目や色合いが異なることがあります。
施工前に閉眼供養(心抜きの儀式)を行い、取り外すのが一般的です。
まとめ
- 石に書いた(彫刻した)文字を完全に消すことはできません。
- 上記(解決策2-2、2-3、2-4)のように削る、切りとる、貼り付ける方法が良く選ばれています。
- お墓の石を動かすときは、事前に閉眼供養(心抜きの儀式)を行うのが一般的です。