お客様が『小さなお墓』を望んだ理由。

「お骨が4つくらい入る程度の、小さなお墓はありますか?」

先日、私がとある勉強会の休憩中にこんな電話をいただきました。

ただ、電話ではお客様の墓地の状況を詳しく知ることができません。

ですから私は、
「現場も見ない状態では正確な金額もお伝えできませんが、今お聞きした感じだと40~50万程度かかるかと思います。
よろしければ一度直接お会いして、お話だけでも聞かせていただけませんか?
話を聞いて「やっぱりやめます」となってもかまいませんので。」
とお伝えさせていただきました。

「では申し訳ありませんが、一度話を聞いてください」

お互いの都合が合う時間を決め、私は電話を切りました。

他人のお骨とまとめてしまうことが、心苦しいんです

お会いしたのはちょうど雨の日でした。

電話で聞くより直接顔を見ながらお話をさせていただいた方が、より多くのことがわかります。
いろんな話をイラストを交えてお伝えできるのもいいのかもしれません。

電話で同じ内容を同じトーンで同じようにお伝えしても、お客様の理解度が断然違います。
私もお客様の「想い」をよりハッキリ受け取れるのです。

「その…実はわが家の話ではなく、親戚の家の話なのですが。
旦那のお姉さんが亡くなって。
息子が県内に住んでいるんですが、その子が母親のお骨も父親のお骨も市営の納骨堂にでも納めると言うんです。
でも、納骨堂に納めるとなるとお骨をまとめてしまうでしょ?
あれがどうしても心に引っかかってしまうんです。
こう言っては何ですが、やはり見ず知らずの人とお骨が混じってしまうのは、なんだか申し訳なくて心苦しいんです」

ご婦人は少し息を整えてから、ふり絞るような声で伝えてくれました。

「ただ、今の感じだとお墓にお骨を納めても、いずれ墓じまいをすることになると思うんです。」

集団納骨堂について

『跡継ぎがいないから、お墓を建てても誰も守ってくれない。』

近年、このような理由で寺院運営・民営・公営の納骨堂を選ばれる方が増えています。

それぞれの特徴として

寺院運営納骨堂:
寺院に併設されていることが多い。基本的に檀家優先。もしくは宗派が決まっている。もちろん、誰でもOKという納骨堂もあります。

民営納骨堂:
宗派を問わず利用できる。利便性の良いところを選べる。独自サービスが多い。利用金額が比較的高い。都市部に集中していて、地方には少ない。

公営納骨堂:
比較的費用が安い。経営が安定している。宗派を問わない。利用するにあたり、住所などの条件がある場合が多い。

富山市営納骨堂の場合

富山市のホームページを参考に、富山市営の納骨堂をご説明しますと

①直接参拝方式(6年間限定):
旧来のお墓同様、参拝者が故人の納骨壇の前まで行き、直接参拝できる。

②間接参拝方式(4年間限定):
間接参拝壇に収蔵し、参拝ホールで参拝する方式。(間接参拝壇のある場所での参拝はできない)

③合葬式参拝方式(永年、生前申し込み可):
焼骨を骨壷から出して個別に袋に収納し、他の方の焼骨と一緒に収蔵する。合葬式収蔵施設に収蔵した焼骨の返還はできない。

と別れています。

利用方法は
①+②+③の『直接・関節参拝使用』だと、『直接参拝壇で6年間収蔵後、間接参拝壇で4年間収蔵、その後、合葬式収蔵施設に永年収蔵される』ことになります。
使用料は203,040円で全額全納制(2018年3月23日現在)。

一番お求めやすい③合葬式参拝方式だと、64,800円(全額全納制 2018年3月23日現在)となります。

価格はすべてお骨1体(骨壺1個)のものです。

富山県はお骨を大切にする県

私は富山県は「できるだけ全てのお骨を、大切にする県」だと感じています。

なぜなら富山県では
・骨瓶が大きく、お骨をすべて納める。
・大きな骨瓶を納めるため、お墓の納骨堂が大きく、地上にある。(全国的には地下納骨が一般的です。)
・お骨(骨瓶)をできるだけきれいな状態にしておきたい。(納骨堂内に水が入ったりすることを嫌う。)
ということを求められているからです。

ですから先のお客様のように「家族のお骨を他の方のお骨と一緒に収蔵する」ことに違和感を感じる方は案外多いのです。

いずれ墓じまいをするにしても、今はお墓に納めたい

お客様のご要望は

  • いずれ墓じまいをするかもしれないが、今はお墓を用意してあげたい。
  • できれば小さなお墓で、安価なものがいい。
  • 納骨堂の扉は富山県らしく観音開きにしてほしい。
  • 骨瓶は最終的に4つ納める予定。
  • 墓じまいするにしても、10年はそのままになる。

ということで、該当するようなお墓を設計しました。

骨瓶が4つ収納可能な小さなお墓
骨瓶が4口収納可能な、高さ1m未満の小さなお墓です。
  • 総高さが1m以下。
  • 骨瓶は4口納めることができます。*骨瓶、骨壺は1口(いっく、いっこう)と数えます。
  • 扉は観音開き。
  • お墓の正面に「南無阿弥陀仏」などの名号はもちろん、「絆」「愛」「やすらぎ」など自由な文字を彫刻することができます。
  • 背面には建墓年月や施主様ご家族のお名前を彫刻することができます。(2~3人程度)
  • 墓石本体、文字彫刻、組み立て設置費用などすべて込みで35~40万円程度(設置場所などの諸条件で多少異なります。)
  • 小さなお墓と言っても、強度的には永年の風説に耐えられるように設計しております。

これからますますお骨の扱い方は多様化していく

少子高齢化が進み、これからますますお骨の扱い方は多様化していくことが考えられます。

「お骨を末永く供養していきたい」と守ってきた富山県でも、お墓だけでなく、集団納骨堂や散骨などを選ぶ方が増えています。

ただ、お骨を納める形は変わってでも、故人を思う気持ちやご先祖様への感謝の気持ちまでは変わって欲しくないと願います。