画数 6画
音読 ショウ
訓読 たく(み)
意味
1. 職人。技術者。たくみ
2. かしら。棟梁
3. 細工。こしらえ
4. 考案する。工夫

 

父は蛙が嫌いな人でした。

触るのはもちろん、見るのもイヤ。
石工職人仲間で「立山の熊」と呼ばれているくらい身体の大きな男が、4歳児が捕まえてきた1円玉くらいのアマガエルを見て腰を抜かすくらいです。

反面、蛙を見つける名人でもありました。
草や岩にうまく擬態している蛙を、遠くから素早く正確に見つけ出します。
蛙探し選手権があれば必ず上位に食い込んでいたと思います。

「あそことそこと、その葉の陰に3匹いる。どけてくれ」

なぜ葉っぱの陰に隠れている蛙まで見つけることが出きるのか不思議でしたが、そこを見ると本当に蛙がいるのです。
あまりにも嫌いなため、誰よりも多くの蛙を見つけてしまうのは皮肉な話ですよね。

 

そんな父も生まれたときから苦手だったわけではありません。

子供のころ自転車で遊んでいたとき、蛙を避けようとして転倒してしまったことがあったそうです。
地面に転んで痛みに耐えているとき、ふと目をあけるとそこに小さな蛙が1匹。

そこから蛙が心底苦手になったそうです。

 

父は手先が器用な人でした。

ごつごつとしたマメだらけの大きな手で、ときどき仕事の合間を見つけては私たちに遊び道具を作ってくれました。
竹とんぼからブランコやプールまで、身の周りにある資材で楽しそうに作り上げていく父の姿が、私のものづくりの原体験になっているのかもしれません。

 

父の夢は彫刻家でした。
ただ彫刻家では食っていけないからと、家業である石屋(石材を加工してお墓や石塀、石畳などを作っていく仕事)を継ぎました。

だからでしょうか。
石彫刻の仕事が入ってくると、嬉々として仕事をしていました。
日中は現場仕事があるので、好きなお酒も飲まず夜中に彫刻物と向き合っていました。

石彫刻とはお地蔵さまや観音様のような仏像だけではなく、招き猫やふくろうなどの縁起物の注文もありました。

蛙も「無事カエル。お金がカエル」など縁起物の定番で、人気があります。

 

ある日、カエルの彫刻を作っている父に「カエル嫌いなのに大丈夫なの?」と聞くと、「仕事だから大丈夫」とひと言いって、また石を叩いていました。
側には苦手だったはずのカエルの資料が広げられていました。
蛙が苦手な父の頭の中は、蛙でいっぱいだったのでしょう。

 

父は、私の知る誰よりも石と向き合い続けた職人だと思います。
ただ石の前で腕を組み、考えるポーズをとる様なことはしませんでした。
ひたすら石を叩いて叩いて叩き続けて、夕暮れどきには道具を握る指が硬直してしまう日々を過ごしてきた人でした。

「職人ちゃそんなもんだ」
夕食時の晩酌を楽しみながら父は言います。
昔はこんな職人ばかりだったそうです。

そしてそんな技術者を人々は尊敬の念を込めて「匠(たくみ)」と呼んでいました。

 

今は昔ほど彫刻の仕事もなく、また良い機械があるので石を叩く機会は減りました。
それでも手加工が完全になくなることはないでしょう。
無機質で冷たいと思われる石に、人の思いをのせ後世に伝えるためには、匠の技が必ず必要になるからです。

 

 

そんな匠の技を今週末、体験することができます。

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第9回 匠の技フェア

令和元年9月14日(土)・15日(日)
午前10時~午後5時

アピアショッピングセンター 1階中央催事場
〒930-0010 富山市稲荷元町2丁目11-1
(富山地方鉄道稲荷町駅下車 徒歩0分)
TEL:(076)445-3111【代表】 FAX:(076)431-8635

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一番の目玉は小中学生無料の「ものづくり体験教室」です。

私も14日(土)は石材施工「勾玉つくり」の担当として常駐しています。
よかったら遊びに来てください。

 

 

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