神社の正殿を参拝するより大事な思い出

「ちょっと待って」

歩いていると突然、腕をつかまれ後ろに引っ張られました。

 

いきなりだったので反射的に振り払いそうになります。

「ここの階段、こんなにキツかった?」

すぐ後ろから声がしました。
振り返ると母が肩を上下させ、息を整えていました。

 

ここは石川県の白山比咩神社。
年の初め、母と二人でお参りに来たときのことでした。

この神社には参道が3つあります。

1つは広い駐車場に車を停めることができ、正殿に近い北参道。
もう1つは平成18年に新しく禊場が作られた南参道。
そしては樹木に覆われた石段が続く表参道。

私たちはいつも表参道を通っています。
それは参道前の売店のおはぎがおいしいのと、この参道の空気感が好きだからです。

 

表参道の入り口には立派な石の鳥居が立っています。
高さ3間3尺(約6.4m)。
昭和の初期に建てられたものです。

実はこの神社には永らく鳥居がなく、そのことは白山七不思議のひとつに数えられています。
鳥居の形は明神系と呼ばれるもので、全国に多くみられる形です。
ただ鳥居の形は似ていても、その大きさや寸法取り、柱の傾きや形状は地域ごとに多少異なり、一部口伝が残っていると父に聞いたことがあります。

鳥居の向こうは神域。
一礼をしてくぐると空気が変わります。
森の冷気が肌を引き締め、心地よい緊張がうまれました。
深い緑が目に心地よく、木洩れ日はあたたかさを届けてくれます。

自然に浸りながらこの約250m続く石階段を黙々と上っていると、忘れていた思い出がよみがえったり、悩みに対する妙案が浮かぶことがあります。

何も考えずただ参道を歩く時間は、私にとっては貴重な時間でした。

 

ただ母にとってはキツい時間だったようです。
まだ60半ばではありますが、年々足腰が衰えていると言っていました。

「去年はこんなにキツくなかったはずなのにね」
そう言いながら母は腕にしがみついてきます。

40過ぎたおっさんが、母親と腕を組んで歩く。
私はちょっと戸惑いました。
正直、小っ恥ずかしい。

ただ嫌な感じはしませんでした。

「介護してるみたいだね」
間を持たせるために茶化してみます。

「そうだね。少しは運動しないとダメかな」
「家のウォーキングマシンで朝10分歩くだけでも違うよ」
「朝はゆっくり寝ていたいからムリ」

そんな母との他愛もない話が、とても楽しい。

一歩一歩、母の歩幅に合わせて歩いてみる。

あと何回こうやってお参りできるのかな。

 

 

 

手水の冷たさがとても心地よく、洗ったあとは不思議と手があたたかく感じます。

 

 

 

 

令和2年の参拝は、参道がメインでした。

 

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