お盆も過ぎ、朝夕の風も涼しくなった頃。
ちょっと遅めの夕飯の準備をしていたわが家に「ドーン」という音が響いた。
「花火だ!」
6歳のチビが目を輝かせて声を上げる。

「二階に行こう」
私の手を取り、階段を駆け上がる。
薄暗い我が家のテラスから、いつもより大きな花火が見えた。

最近、花火の音が聞こえるといつもこのパターンだ。
中学生の上の子たちはもう花火にはあまり反応しないが、幼稚園児のチビにとってはとても楽しみな時間のようだ。

少し暗いせいだろうか。チビは私の指を離さない。
指先から伝わるぬくもりを感じながら花火の音を聞く。
目を輝かせながら夜空を見つめるチビの横顔を見ていると、私が子供のころに祖母と花火を見に行ったことを思い出した。

 

 

あれはいくつの頃だったのだろう。
あいまいな記憶なのだが、一度だけ祖母と富山の花火を見に行ったのを覚えている。
車を運転できない祖母は、幼い私と弟、そして従妹を連れてバスで富山の街まで連れて行ってくれた。

正直、私にそのとき見た花火の記憶はない。
ただ「ドーン」と響く音と体に伝わる振動。そして初めて夜のバスに乗ったドキドキ感と、花火に照らされた祖母の横顔と手のぬくもりだけは覚えている。

祖母は長崎の出身。
戦後、富山に嫁いできたと聞いている。
だから祖母は富山弁とはちょっと違ったイントネーションをしていた。
いわゆる「旅の人」だった。

私の記憶では祖母と祖父はいつも喧嘩していた。
だけど祖母は祖父のいないところでは、祖父を悪く言ったことはほとんどなかった。

そんな祖母のおかげだろう。
いつも酒臭く、説教好きで頑固者の祖父を、私は結構好きだった。
毎回同じ話を聞くのも苦にはならなかったくらいだ。

決して穏やかな祖母ではなかったが、私をたくさん叱ってくれ、そしてたくさんかわいがってくれた。

 

 

「きれいだねぇ」
夜空に咲いた赤い火の花をチビは嬉しそうに見ている。
「そうだね」
私は小さな手を握り返す。

この子はいつまで一緒に花火を見てくれるのだろうか。
この子は私のぬくもりを覚えていてくれるだろうか。
私はこの子の良い父親でいられるだろうか。

また来年も一緒に花火を見ようね。
その時は、キミの大ばぁちゃんの話も聞いて欲しいな。

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