「雪、ぜんぜんふらないね」
チビは毎朝、窓の外を眺めてはため息をついています。
今日は大寒。
「一年でもっとも寒い時季」と言われていますが、今年の富山は全く雪が降っていません。(2020年1月20日現在)
ただ、気象庁のホームページを見ると「2月には平年並みの気温に落ち着く可能性が高くなっています」とあるので、これから寒い日が増え雪が降るのかもしれません。
冬にお墓を建てていいのか
これだけ雪がすくないと「少し寒いけど、雪が降っていないのでお墓を建てることはできますか?」という問い合わせがあります。
今回はその理由についてお話いたします。
冬にお墓を建てるのオススメしない5つの理由
その理由は5つあります。
1)気温が4℃以下になると、コンクリートの硬化に不備が出る。
2)気温が4℃以下になると、モルタルの硬化に不備が出る。
3)墓石の組み立てに使用している接着剤は5℃未満になると硬化が止まる。
4)施工時に凍結や積雪がある場合、まずそれらを取り除かなくてはいけない。
5)凍結や積雪がある場合、石が非常に滑りやすくなり、安全な施工が行いにくくなる。
順を追ってご説明いたします。
1)気温が4℃以下になると、コンクリートの硬化に不備が出る。
お墓を支える基礎はコンクリートで作られます。
このコンクリートは「セメント」と「砂」と「水」を混ぜて作られるのですが、日平均気温が4℃以下になると硬化するのに非常に時間がかかります。
それどころか本来必要な強度に到達しないこともあるのです。
このような寒い時期に施工するコンクリートを「寒中コンクリート」と言い、凍結しないように温度管理を行い、通常より長い養生期間を設ける必要があります。
つまり寒い時季に施工をするには、基礎を作成するのに通常よりコストがかかる上、不備が出やすくなります。
2)気温が4℃以下になると、モルタルの硬化に不備が出る。
コンクリート同様、石と石、石とコンクリートの接着に使われる「モルタル」も寒い時期に硬化不良を起こしやすくなります。
特に冬季のモルタルは
・接着不良による石の剥離
・エフロレッセンス流出による石の汚染。
が起きやすいのです。
「エフロレッセンス(白華現象:はっかげんしょう)」は見た目の汚さもありますが、石を汚染し表面を脆くします。
つまり寒い時季に施工をすると、お墓が汚れ見た目が汚くなりやすく、また石を傷めやすくなります。
エフロレッセンス(白華現象)については「エフロレッセンスがお墓に与える影響は」をご参考ください。
3)墓石の組み立てに使用している接着剤は、4℃以下になると硬化が止まる。
一般的な墓石の組み立て(石と石の接着)に使用されている「変性シリコン」は、気温が4℃以下になると硬化が極端に遅くなります(もしくは硬化が止まります)。
温度が上がればまた硬化が始まりますが、一度お墓の内部まで温度が下がると冬の間はなかなか温まらないのが実情です。
お墓は通常、接着剤を使わなくても自立することができるように設計されていますが、やはり強度を考えると接着剤の硬化を妨げないことが大切です。
4)施工時に凍結や積雪がある場合、まずそれらを取り除かなくてはいけない。
モルタルやコンクリート、接着剤内部に氷や雪が混入した場合、それらを取り除いてから施工しないと氷や雪は内部に長く残ることになります。
もちろん内部に氷や雪が残ったままだとうまく硬化しないだけでなく、強度にも問題がでてきます。
ですから施工前に氷や雪を取り除き、施工中にも混入しないように気を付ける必要があります。
しかし墓地でそれらの養生を行うのは非常に手間がかかります。
ときどき雨や雪を避ける方法として、他のお墓にブルーシートをかけて屋根を作って作業をしているのを見かけますが、突風であおられたりブルーシートに重みがかかったとき、お墓をなぎ倒す危険性が高く避けるべき方法です。
5)凍結や積雪がある場合、石が非常に滑りやすくなり、安全な施工が行いにくくなる。
どんなに石の取り扱いに慣れている人でも、「濡れた石」「表面が凍結した石」は必ず滑ります。
特に凍結は気温だけでなく風による温度低下も影響するため、凍結や積雪がある時期の施工にはひと手間もふた手間も余計にかかってくることになります。
まとめ
1)気温が4℃以下になると、コンクリートの硬化に不備が出る。
2)気温が4℃以下になると、モルタルの硬化に不備が出る。
3)墓石の組み立てに使用している接着剤は5℃未満になると硬化が止まる。
4)施工時に凍結や積雪がある場合、まずそれらを取り除かなくてはいけない。
5)凍結や積雪がある場合、石が非常に滑りやすくなり、安全な施工が行いにくくなる。
以上の5つの理由から、私は冬の寒い時季にお墓を建てることはオススメしておりません。
「施工費が高くなり、工期が長くなり、出来上がったものには不備が出やすい」のが現状です。
どうしても建てたい場合は
温度管理も含めて、しっかりとした施工を行う石材店
上記内容も含めて、施工行程を顧客に説明するシステムを作っている石材店
*「施工改定を顧客に説明するシステム」とは「施工記録などを管理作成していて、施工前、施工後に説明する準備があり、それを実行している」ということです。
*施工記録については「石屋にも特徴がある(施工記録について)」をご参考ください。
にご依頼されることをオススメいたします。