ただ、お墓に書くときは少し注意が必要な文字なんですよ。
今日は「令和」という文字が持つ特殊な事情をご説明したいと思います。
「令」は書体によって形が大きく異なる文字
お墓に一度文字を彫刻しますと、それを修正するのは非常に難しい作業になります。
ですからお墓職人である私も、普段から文字については細心の注意を払っています。
しかも文字には「書体によって形が大きく異なる文字」があるのでややこしくなります。
とくに元号「令和」に使用されている「令」は、手書きと活字の書体によっては文字の形が大きく異なるのです。
というのは、「令」の筆順の最後にご注目ください。
「ゴシック体・明朝体」では「縦線」が使われていますが、「楷書体や手書きの文字」では「点」が使われています。
ただ、2019年4月1日に菅義偉内閣官房長官が記者会見で新元号を発表したときの文字は楷書体なのに『縦棒』を使っています。
これでは混乱しても仕方ありません。
他の書体でも比べてみてください。
学校教育で「文字のトメやハネ」で厳しく採点されてきたので、「どちらが正しいの?」と気になりますよね。
記者会見を見た人の中には「縦棒こそが正しい『令』」だと思われている方もいらっしゃるかもしれません。
では、どちらの「令」が正しいのでしょうか?
文化庁の文字の形に対する見解
文字の形については平成28年2月29日に文化庁が見解を発表しています。
- 手書き文字と印刷文字の表し方には、習慣の違いがあり、一方だけが正しいのではない。
- 字の細部に違いがあっても、その漢字の骨組みが同じであれば、誤っているとはみなされない
学校などはこれを基に指導しているので、その文化庁の見解を「正しい」としてもいいのではないでしょうか。
つまり「ちょっと違っていても骨組みが同じなら間違いじゃないよ」ということです。
(もっと早く知っていれば、学生のときはちょっとハネても間違いにならなかったのかな…)
私は「お墓に使う文字もどちらを使ってもいい」と施主様にご説明しています。
ただ迷ったときは祖父や父から教えてもらった指針に従っています。
お墓に使うの文字の指針
お墓に使う文字や家紋に関して、私は「施主様(施主ご家族様)の意向に沿う文字を使用する」ようにしています。
つまり「戸籍などにはこだわらないで」お墓に彫るようにしています。
ただ、中には
・戸籍に記されている文字
・人に知られていない真名(まな)や公表している仮名(かな)
・ご自分で作られた家紋
などを使用する方もいらっしゃいます。
「どちらにすればいいのかわからない」場合は、「普段その方が書いていた文字」をオススメしています。
お墓に使う文字の指針
・基本は施主様(施主ご家族様)の意向に沿う文字を使用する
・「どちらにすればいいのかわからない」場合は、「普段ご本人が書いていた文字」を使う
文字は作ることができます
「令」のように、お墓に使う文字は「自分の思うような形」にすることができます。(実際の文字の造形の良し悪しは石材店の技量によります。)
例えば私の名前は「龍厳(たつよし)」と言いますが、普段書くときは「龍」の最後の線を「縦」に書きます。
これは父から「縁起物にはこう書くので、名前を提出するときに縦線で書いた」と聞いているので普段からそう書いています。
正月の凧などにも「縦線」で書かれています。
石材店やお墓を決める前に、必ず文字のサンプルを提出してもらいましょう
実は「令」に限らず、書体によって「トメ、ハネ、ハライ」や「文字の形が違う」ということはよくあります。
また、異字体(旧字・略字・俗字)でも文字の形が変わってきます。
特にお墓に彫刻すると、修正するのは難しいので事前に確認することが重要になってきます。
石材店によって用意できる書体の数が制限されることもあります。
できれば石材店やお墓を決める前に、事前に書体のサンプルを確認することをオススメいたします。
参考記事:お墓に書かれた名前や家紋に間違いを見つけたとき@富山のお墓の場合
まとめ
「令和」の「令」は書体によって形が異なるが、どちらも正しい文字である。
お墓に文字を彫る場合、書体や形に決まりはない。
名前は「その人が普段書いている文字、書き方」に習う。
文字に対する考え方は石材店ごとに違うので、書体サンプルを確認してから石材店を決めてもいいくらいです。